ephemeral -3-

 

まだ少しぼんやりとしていた僕は、つい指先にあった黄金色の頭を撫でてしまった。


「あなた、今僕に笑ってほしいって考えた?」


ぱちっと目を開いて、ジョミーが僕を見つめる。
この彼は、ミュウではないのに僕の心に侵入できるらしい。


「違うよ…あなたの考えていることが、僕の中に流れ込んできたんだ」


心の遮蔽が効かないのは…僕の方か?


僕の手を乗せたままの、端からみたらかなりおかしな状態でジョミーは僕を見つめている。
すると、すぐ近くに立った人の影が落ちてきた。

「ソルジャー、あれでは仲裁になっていませんよ。でもあなたがアミダといっていたので、毎日それで順番を決めるようにしてきました」

初めて聴くのに、馴染みのある声。思念を使わずに話をするリオがそこに居た。
「あれ?ブルーもう帰ってきたんですか?」

この世界の僕はどんな人物なのか。
先ほどから感じている違和感。やたらと細かい設定。
夢からいつ目覚めるのかはわからないが、少なくとも彼らの知っているブルーは僕とはまったく違う人物のようだ。

 

「…お前は…ブルーじゃない」


急に、
ジョミーがつぶやいた。
リオがぎょっとした表情を浮かべる。


「え…?どうしたのソルジャー?」
ジョミーは、頭にあった僕の手をぐいっと引っ張った。思わずそのまま、前のめりによろめく。

「こいつは…宇宙人だ!!」

次の瞬間、思いきり腕をねじあげられた。まだ、身体中が重くて言うことを利かない。
僕は芝生にうつ伏せの状態で押し付けられた。息が苦しい。後ろ手にひとくくりにされた手首がひどく痛んだ。
「…っ!」

「リオ!ネクタイ貸して!」
「いくらなんでもやり過ぎです!ブルーがこれじゃあかわいそうだ…」

ジョミーが怒鳴り声を上げた。
「だから!こいつはブルーじゃないの!ブルーの姿をした宇宙人なんだよ!」

僕の心が、彼の中に流れ込んでいるらしい。でも、どこまで?
夢とは誰しも思い通りにはならないものだが、この状況は明らかに異常だ。
ジョミーの声が頭上でわんわんと鳴る。

「本物のブルーをどうしたんだ!お前は『ミュウ』なんだろう?ミュウってエイリアンか?
ブルーの中身…食べちゃったのか?」

ジョミーの声が、怒りと恐れで震えている。


僕は、いたたまれない気持ちでいっぱいになった。
この世界の「ブルー」を案じるジョミーが僕をこうして組み敷き、存在そのものを否定していること。
たとえ幻にせよ、彼の口からこんなにも心ない言葉が己に向けて発せられるのは辛かった。

しかも、彼が案じているのは「僕」なのだから。

「ジョミー…違う…僕は、エイリアンなんかじゃない…!」

(続く)

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