ephemeral -1-

 

夢を、見ていたんだ。
初めての場所なのに、大好きで大切なもうひとりの君たちが僕を迎えてくれた。

ずっとここにいればいい。
ずっと、眠っていたらいい。

そんな風に、幻の僕を引き留めてくれた。

ねえ、君は信じてくれるかな。僕にそっくりな姿をした、もうひとりの「ソルジャーブルー」と出会ったことを。
笑わないでくれるかな。君のように明るくて希望に満ちた「ジョミー」に、勇気づけられたことを。

僕の目覚めが…近付いている。
だからきっと、夢を見たのだろう。

ミュウとしての人生に起きたすべてのことを焼き付けた、僕の記憶。
でも、そこに夢を残すことはできないのかもしれない。

それでも。
もしも欠片でも残すことができたなら。


君に伝えたい。僕たちによく似た、愛すべきひとたちのことを。
皆が笑って暮らすあの世界のことを。
可笑しいって、笑ってくれるだろうか。

 

 

少女たちの声が、鐘と共に弾けた。
子ども…というには大人びている、少し艶を含んだ声。次には少年たちの怒鳴り声。物静かな性質が大半を占めるミュウには珍しいことだ。
あれは…ジョミーの声だろうか?

「ふざけるな!僕を何だと思っているんだ」
「駄目生徒会長」

すかさず入る横やり。
「生徒会長ではありません!ソルジャーです」
どこかで聞いたような?

「な…!そこ違うだろ!ツッコミどころが間違ってるだろリオ!!」
…リオ?

「もういい!ジャンケンでも何でもいいから好きに決めてくれ。僕はこの件からは手をひかせてもらいます」
相手の少年の怒鳴り声が大きくなる。
「学校の秩序と平和を守るのが生徒会の仕事だろ〜?」

知るもんか、と捨て台詞でこちらへ駆けてくるのはやはりジョミーのようだ。何だか、ひどく思念が遠く感じる。
むしろ、ないといった方が正しいか。普通の人間の男の子の、精気にあふれたいのちの息遣いを感じた。

 

次の瞬間、胸ぐらを掴まれた。

「ソルジャーブルー!あなたここで何やってるんだよ!」

そのまま上体を引き起こされた。あまりの突然な出来事に、声も出ない。それよりも永らく動いていなかった背筋が悲鳴をあげていた。

「…苦しい…ジョミー…」
何とか声を出す。
どうやら、眠りに落ちる前よりは体力が回復しているようだ。

「当たり前だ!苦しくなるようにネクタイ持ってるんだからさ」
…ネクタイ?

僕は、何度かの瞼の痙攣を繰り返した後に目を開けた。辺りの眩しさに視界がゆがむ。
恐ろしく近くにジョミーの顔があって驚いたが、何より彼がアタラクシアの学生服を来ていたことに困惑した。

これは…夢なのか。
ジョミーが僕に更に詰め寄る。

(続く)

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