「キャプテンのナキネズミ」(SAMPLE)
「キャプテン、少し仮眠されては?顔色も悪いようだ」
ドクターノルディは水の入ったコップを渡しながらハーレイに声をかけた。
「気持ちはありがたいが、そういう訳にもいかなくてね。
次の会議までに、前回の戦闘によるギブリの被害状況と 搭乗可能なパイロットのリストを用意しなくては」
一気に薬と水を飲み干すと、仕方ないといった表情のノルディにコップを返して立ち上がった。
「また寄ってください。薬を持たせるとあなたは絶対に来なくなりますから、処方はしませんので」
自分を案じてくれる名医の友人に、ハーレイは心から感謝した。
部屋を出ようと扉の前に立つと、開いたドアの向こうにはさっきの赤ん坊を抱えたリオが立っていた。
おもわず絶句する。
そしてハーレイを認めた瞬間に、赤ん坊は再び泣きはじめた。
「ぴー!ぴー!」
ずいぶんと変わった声だが、こちらに向かって必死に両手を伸ばし顔を真っ赤にして泣いている。
その声にようやく我に返ったハーレイはリオに訊ねた。
「リオ、その子は一体?」
『キャプテン…実は、あれからこの子が鳴き止まなくて。
キャプテンを恋しがって鳴くんです。
シャングリラが大変な時期だということはわかっているのですが、このナキネズミのお世話をキャプテンにお願いにきました』
再びハーレイは言葉をなくした。な…何を言っているんだリオは?
「リオ。君が抱いているのは人間の赤ん坊だろう?」
その間もぴーぴーと甲高い声で赤ん坊は泣き続ける。
だがリオは、不思議そうな顔をすると話を続けた。
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